nevertheless

美しさと賢さとノスタルジーの回顧録

現代美術家の杉本博司が好きで仕方がない話

あまりにも想いが溢れてしまうのでここに記す。

 

出会いは私が光と影に惹かれるきっかけになった谷崎潤一郎の陰影礼讃を表現する美術家がいるらしいと知った時。
取り憑かれたように調べて彼の代表作海景シリーズに出会った。
場所、時間、全てがその場所のその時しか映さない写真は興味がなければただの地平線で面白さなんて全くないかもしれないけど、最高にロマンチストの私にはその事象とモノクロの世界がとても魅力的に見えてすぐに虜になった。

だってもう2度と見られない瞬間でしょ?


それから数年後、彼の生まれ育った小田原の地に10年かけて着想し、10年かけて設計した施設江之浦測候所ができると知り、小田原の海景を体感しに行かねば死ねぬとオープンの日を首を長くしながら待ったあの時がすでに懐かしい。
開場後実際に体感した杉本博司の世界は徹底的に作り込まれたものなのに全て自然と絡められていて、とても物理的で私なんかの脳みそでは処理できないほど巧妙なものしかなかったけど、言葉では表せないほど感動して、さらに心を掴まれた。


出会いと馴れ初めが随分と長くなったけどそれから2年が経った今、杉本博司が京セラ美術館のリニューアル開館記念展として個展を開催すると聞き、さらに開催展の名前が「瑠璃の浄土」と聞いて舞い上がる。だって瑠璃色って好きな色だから。それにどうやら噂の新作も初公開するらしいと聞き行くしか選択肢はなかった。
そんな彼の個展を訪れた先日、あの暖簾を見て小田原の気候や空間、感動を次々思い出し、これから先に待ち受ける彼の作り上げた空間を創造して鳥肌が立ち、目頭が熱くなった。

 

入って早々、あの五輪塔に海景のコラボレーションは禁断だと思ってしまったし、光と影についに色を出してきてさらに杉本ワールドから抜け出せなくなった。


美術家として有名になる前から古美術の収集をしていた目利きのコレクションまでも見ることができてなんて寛大なんだ…。(大した配慮にもならないけどまだ個展は開催期間があるのであまりにも直接的な感想は控える)


思いが溢れすぎるのでそろそろ最後にするけど知識が豊富で物理的な部分を具現化する力に惚れ惚れせずにはいられないので今日も今日とて感動している。